IoTサービスダイアグラムを活用して、組織リソースとしてのヒト、モノ、データを有機的に結び付ける

うちの郵便ポストは、なぜ手紙が届いたことを教えてくれないの?(トニー・ファデル)注1)


対象とする皆様】

  • デジタルトランスファメーションを推進する中で、自社のオペレーション領域(製造、建設、物流、仕入、店舗運営、公共インフラ保守など)の変革を企画/推進している方々
  • センシング技術やアナリティクス/人工知能を活用して、顧客企業のオペレーション領域における改善や変革を支援するコンサルタント、システムインテグレーター、テクノロジープロバイダーの方々

インダストリアルインターネットというコンセプトは、ゼネラルエレクトリック社が提唱した概念であり、センシングテクノロジーやアナリティクス/人工知能テクノロジーを活用し、組織内のオペレーション領域(例.製造、建設、エネルギー、輸送、医療、小売り、都市、公共サービス)の生産性と信頼性を改善し、最終的にはその変革を実現しようとする取り組みを意味します。インダストリアルインターネットは、ビジネスモデルキャンバスにおけるリソース主要活動に対してズームインしていくものです。また、デジタルトランスファメーションにおけるデジタル活用によるオペレーションの変革に対する1つのアプローチとして、インダストリアルインターネットを捉えることもできます。 

インダストリアルインターネット推進に関する4つのステージ

当社のインダストリアルインターネットに対するアプローチは、「特定の組織オペレーション領域における課題を解決するために、組織リソースとしてのヒト、モノ、データを有機的かつリアルタイムに結び付ける」という非常にシンプルなコンセプトです。これを推進していくために、「定義する」「発見する」「結合する」「拡張する」という4つのステージをご紹介していきます(図1)。 

インタストリアルインターネット推進に関する4つのステージ

(図1)インタストリアルインターネット推進に関する4つのステージ

定義する

このステージの大きな目的は、対象とするオペレーション領域(例.物流)のざっくりとしたプロセスを描き、その内部にあるニーズや課題を整理していくことです。これを効果的に行なうために、ジョブ理論を活用していきます(図2)。ニーズと課題を整理する方法については、イノベーションプロセスをご参照下さい。 

物流オペレーションプロセスのサンプル

(図2)物流オペレーションプロセスのサンプル

発見する

このステージの大きな目的は、対象とするオペレーション領域に関連する組織リソースとしてのヒト、モノ、データを洗い出すことです(図3)。ヒトは以下の4つのタイプに分類することができます。

  • ジョブ履行者 - 中核となるジョブを履行する個人、組織、グループ(例.ドライバー、ドライバーが属する組織やグループ)
  • ジョブ監督者 - ジョブ履行者を監督または統制する個人、組織、グループ(例.経営層、ファシリティ管理者、規制当局)
  • ジョブ関連者 - ジョブ履行者を支援する内部または外部の個人、組織、グループ(例.車両の修理/保守スタッフ、サプライヤー)
  • ジョブ受益者 - ジョブが履行されることによって恩恵を得る顧客や利用者(例.荷物の受取人)

モノは以下の4つのタイプに分類することができます。

  • 販売プロダクト - 市場に提供することを目的としたプロダクトや商品(例.荷物)
  • ウェラブル - 顧客や従業員といったヒトが持ち歩いたり、着用したりするデバイス(例.モバイルデバイス、社員証)
  • サプライチェーン - 製造や流通販売といったオペレーションに必要な機器、デバイス、インフラ(例.車両、梱包材、パレット)
  • 施設 - 消費者が企業と取引したり、市民が公共事業体と交流したりするための場所、施設、インフラ(例.道路、駐車場、道路標識)

データは以下の4つのタイプに分類することができます。

  • センサーデータ - モノやヒト(モバイルやGPSなど含む)から直接的に収集されるデータ
  • 組織データ - 顧客、在庫、取引データを含む既に存在している全てのビジネスデータ(パートナーやサプライヤー含む)
  • インターネットデータ - ソーシャルメディアプラットフォームから利用者が生成したデータを含むインターネット上の全てのデジタルデータ
  • 公共データ - オープンデータを含む政府、自治体、学校、非営利組織によって生成/収集されたデータ
組織リソースとしてのヒト、モノ、データのタイプ

(図3)組織リソースとしてのヒト、モノ、データのタイプ

結合する

このステージの大きな目的は、選択したオペレーション領域における特定の課題を解決するために、前ステージで洗い出されたヒト、モノ、データを結び付けるサービスに関する基本的なアイデアを創出することです。データの主要ソースデータの活用方法という2つの側面から、以下の4つの基本的なサービスパターンを検討することができます(図4)。

  • ヒトからデータを収集してモノを管理する
  • ヒトからデータを収集してヒトへ通知する
  • モノからデータを収集してモノを管理する
  • モノからデータを収集してヒトへ通知する 
ヒト、モノ、データを結び付ける4つの基本的なサービスパターン

(図4)ヒト、モノ、データを結び付ける4つの基本的なサービスパターン

IoTサービスダイアグラムは、これらの4つのサービスパターンに対するアイデアをプロジェクト内で可視化したり、テクノロジーに精通していない経営者を含む多くの利害関係者に対してプレゼンテーションしたりする際の有効な手段となります(図5)。 

 

インダストリアルインターネットの世界においては、リアルタイム性が大きな価値提案の1つとなります。このサービスダイアグラムは、「Aというニーズの実現を阻むBという課題を解決するために、組織リソースであるヒト、モノ、データを結び付けることによって、リアルタイムにCを実現/統制/発見/共有する」というソリューションの価値提案を上手く説明することに役立ちます。

モノからデータを収集してヒトに通知するサービスダイアグラム

(図5)モノからデータを収集してヒトに通知するサービスダイアグラム

拡張する

このステージの大きな目的は、インダストリアルインターネットに対するプロジェクトの対象領域を2つの視点から段階的に拡張していくことです。2つの視点とは、奥行きと幅です。

 

1つ目の視点である奥行とは、アナリティクスや人工知能のテクノロジーを活用して、データをよりビジネスに役立つ洞察や知性に変換することを意味します。例えば、ショッピングカートに取り付けられたセンサーから収集されたカートの中身(センサーデータ)、購買履歴データ(組織データ)を組合せることによって、新しいサービスが生まれてくるかもしれません(図6)。

2つのデータソースから洞察や知見を導出

(図6)2つのデータソースから洞察や知見を導出

2つ目の視点である幅とは、特定のステップで得られたデータや洞察を他のステップにフィードバック/フィードフォワードしていく仕組みを生成していくことです。例えば、監視ステップで得られたデータや洞察は、修正ステップに対して役立てる(フィードフォワード)ことができます。同様に、完了ステップで得られたデータや洞察は、次に繰り返される計画ステップに役立てる(フィードバック)ことができます(図7)。

 

このような2つの仕組みは、組織オペレーションにおけるOODA(ウーダと読みます)ループを確立することに貢献します。すなわち、IoTテクノロジーを活用して状況をセンシングし、人工知能テクノロジーによってそれが意味することを認識し、リアルタイムで適切な意思決定とその実行を可能とするのです。

フィードバックとフィードフォワード

(図7)フィードバックとフィードフォワード

注1)iPodの実質の生みの親であり、米国のIoTスタートアップNest社の創業者。この言葉は、同氏の幼い子供の質問からインスピレーションを得たとTEDで語ったもの。 


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